前回のズミクロン50mmの記事で、次に大物の記事を投稿すると言ってから時間がたってしまいました。その前にすこし過去の振り返りをしておきたいと思いました。Summilux(ズミルックス)についてです。
ちなみに超余談ですが、この書き出しをいま病院の家族待合室で書いています。ちょっと親が大手術中でして・・・。これで少し気を紛らわしています。記事投稿時点ではすでに退院しており一応問題はありません。人生いろいろありますね(ちなみに親の手術と同時、ほぼ同じ時間帯に嫁は産院で陣痛中という・・・そんなことある?・・)。
※以前書いたSummicron遍歴はこちら
さて本題。
Summilux(ズミルックス)。ライカレンズで一番好きなレンズです。スタンダードレンズとしてはズミクロンがありますが、ズミルックスはF1.4の大口径レンズとして、また線の細いシャープかつしっとりした写りを持つレンズとして違った魅力を持っています。
レンズの話をすると50mmかそれとも35mmかという視点もありますが、とりあえず50mmか35mmかはさておき、私が過去に使用してきたSummilux遍歴について記載します。はじめて手にしたときから、このレンズの魅力に引き込まれてしまいました。その遍歴をご紹介させていただきます。
最初はSummilux 50mm 2nd(第2世代)
一番最初に手にいれたのはSummiluxの50mm 2nd(第2世代)。はじめてのデジタルライカ、M-P Typ240を手に入れて、どうしてもデジタルでのF1.4の写りが試したくて入手しました。ここでズミルックスの描写の虜になってしまった。今思えば状態はあまりよくなく、外観の傷や塗装剥がれ、ヘリコイドは油が抜けて動きにムラがありました。しかしレンズ面はきれいでチリも少なめ、歴戦といった感じでした。これがとても良い写りでした。線の細いシャープな描写、f1.4でのとろけるようなボケ。Typ240のアンダー目の独特な陰影とマッチして、近所の住宅街を撮るだけで、それっぽく写ってしまう。外観の貫禄も、写りの良さも気に入っており、自分の結婚式でも持参して新郎席から撮影していたほどです。
しかし当時、金銭感覚が麻痺しはじめていたこともあり、オールドレンズで満足していたものの、現行レンズの写りが気になりだし・・・これはライカ沼な人には「あるある」ではないかと思いますが、結局は手放してしまうことになります。それが破滅のはじまりでした(笑)。ライカは最初オールドレンズから入ることが多いですが、一方で「現行レンズ」という言葉がとても甘美に響くときがあるものです。
ちなみにこの前後にSummilux 50mm 3rdも一瞬入手したのですが、曇りレンズを掴まされ、しかも信頼しているリペアショップからもメンテを断られて、良い思い出がありません。すぐジャンクとして手放しましたが10万ほど損をしています。リペアショップの話では、このレンズは後ろ玉の貼り合わせに難があり、曇ってしまうことが多いとのこと。そうなると玉交換でしか修理できないと。リシアル後半、370、380万代あたり?かな?それ以降はまだ正規メンテでレンズ交換可能と伺いました(うろ覚えなので真に受けないでください)。2ndと同じ光学で最短70cm、しかも重さも軽く、デザインもよい、と非常に魅力的なレンズですが、自分は手を出しづらくなってしまいました。
はじめての現行レンズSummilux 50mm ASPHを手に入れる
次にやっと現行レンズである、Summilux 50mm ASPHを入手することができました。これは当時としてもかなりリーズナブルに入手。実はこのレンズ、さる有名な音楽家の方が手放したもので、直前にライカで正規メンテナンスを受けており、非常によい状態で手に入れることができました。ここで現行レンズの魔力を目の当たりにしてしまった。
このレンズ、独特のデザインも非常にかっこよく、フード組み込みのため別途フードの用意も不要ですし、フォーカスリングのスムーズさ、サイズ感、使いやすさ、そしてその開放からシャープな写りと、どこをとっても最高のF1.4レンズでした。シャープかつ甘美な描写はズミルックスの特徴ですが、デジタルだけでなく、フィルムでもとてもよく写る。それにフィルムでのボケの感じもスムーズで、フィルムの持つ味わいのようなものを堪能できます。いまだに余裕があれば手元にほしいです。唯一、好みが分かれるのはF2.8〜F4あたりでボケが星型になるところ。イルミネーションなどを撮るとボケが星型になります。これを表現にうまく落とし込めればいいのかもしれませんが、個人的によく撮れたとき背景に星型が入るのは少し気になりました。こちらも手放してしまうのですが、あとでまた入手することになろうとはw。
以下、フィルムでの作例。本来もっとシャープに写るが、どれも少し暗い場所での撮影で、個人的にはとても好きなトーンになりました。3枚目の背景が少し角のついたボケになっています。
2本目の50mm 第2世代とSummilux 35mm 旧ASPHとクセ玉
その後、しばらくはズミクロン35mmなどの使用が続きましたが、どうしても50mmが欲しくなってしまいまいました。このあたりがレンズ沼、特にライカレンズでのそれはとても危ない。そこでいろいろと物色し、再度第2世代のSummilux 50mmを入手しました。
当時、少しずつ値段が上がってきていたため、諦めていたのですが、タイミングよく状態のよさそうなものがでていました。これもかなりの破格で入手。これが大当たりで、外観、レンズ面も非常にきれいで、リングの操作感もとてもよかったです。チリだけ少し気になったのでショップで清掃してもらいましたが「これ随分きれいですね」とリペアショップの方にも言われました。現在このレベルの状態のものは手に入らないでしょうね(おそらく30万オーバーですかね)。外観も塗装剥がれもありませんし、新品当時のツヤとか質感も残っていました。
この頃、カラーでの自家現像などもはじめており、一番写真を楽しんでいたかもしれません。ズミクロンでも十分でしたが、どうしてもf1.4が恋しくなることがありました。
一方で持っていた現行ズミクロン35mmが、なんとSummilux 35mm 旧ASPHに化けました。これもかなりの破格での入手、しかも美品でした。ケース、フィルター、フードなどがセットで憧れのSummilux 35mmです。このバージョンのSummiluxはフォーカスシフトが悩ましいとして有名で、比較的リーズナブルに入手できる場合もありますが、昨今の高騰で割といい値段になってしまいました。私はフィルムをメインに考えていたため、フォーカスシフト問題はあまり気にならず、レンズ状態もよかったので自分にとっては最適なレンズでした。当時デジタルはM10を使用していましたが、前述のようにスナップを主体としていることもあり、デジタルでも微妙なフォーカスの厳密さなどは気になりませんでした。
以下作例ですが、1枚目はフィルムでもこれくらいシャープに写りました。また2枚目はM10で暗い場面ではありますが、Summilux 35mmのよい雰囲気が出ているかと。3枚目は西成地区ですが、ビビって遠目からの撮影。
このレンズ唯一の欠点としては、レンズが大きく重たいこと。Summicron 35mmやSummilux 50mmに慣れていると、かなり重さが違うことと、ラッパ状のプラスチックフードも大きく取り回しがよくありませんでした。一方で写りは最近の光学であるため、現行Summiluxに近い写り。正直これを安く入手できるのであれば、これで十分とも思います(そのためかえってフォーカスシフト問題がとても残念ではありますが、素人スナップではおそらく気にならないと思います)。後述する神戸、大阪、京都でも使用して、とても重宝しました。
クセ玉、球面Summilux 35mm(2nd)
さて、ここから、非常にクレイジーではありますが、なんとクセ玉の王様、Summilux 35mm f1.4 2ndを入手しました。これも今となっては入手しづらいレンズの一つ。当時、急激に評価が高まっており、値段がうなぎのぼりに。手に入れたレンズはこれまた破格でしたが(それでも20万円台半ばはしましたw)、レンズも外観も機能もかなり美品で、フィルター以外のアクセサリーが付属しており、お買い得でした。現在だと20万円台での入手は、状態を考慮すると難しいのかなと思います。
もちろんすぐにシリーズ7フィルターも入手してフル装備にしました。ちょうどこの頃、神戸、大阪、京都に旅行にいったこともあり、このズミルックス3本を持っての贅沢な旅となりました。一方で当時は「現行Summilux 35mm ASPH」にはそこまで興味を持っていませんでした。流石に値段が高いですし、当時の中古価格も50万オーバー。自分にはさすがに出せる値段ではありませんでした。これだけズミルックスのバージョンも揃ってますし、ボディもM10、M4、それにミントコンディションのシルバーのM6なども使っていたため、機材はこれで十分と思っていました。
以下京都にてフィルムでの作例ですが、開放付近での特徴的な作例です。独特のドリーミーな雰囲気でこのレンズの非常においしいところが出ている感じです。
そして現行Summilux 50mm ASPHふたたび
その後、ふたたび現行Summilux 50mm ASPHの描写が気になりだしました。いつもの悪いクセです。
手持ちの美品の50mm 2ndと、重さを理由にSummilux 35mm 旧ASPHを手放しつつ、再度現行Summilux 50mm ASPHを入手しました。店舗では並品とのことでしたが、特に問題なく非常に綺麗な状態でした(フォーカスリングに1箇所、スレがありましたが)。このとき手元には、現行Lux 50mm ASPHと球面ズミルックス35mm 2ndがあり、ある意味、対象的なコンビでした。ここで久しぶりの現行50mmの甘美な描写に触れました。
個人的に現行50mmとオールドの2ndをいったり来たりしている理由は、現行は光学性能的に夜などの暗い状況での撮影でも光源があればシャープに写る点でした。オールドですと工夫すれば撮れますが周辺が荒れやすい。それが味と言えなくもないですが、ある程度暗い状況でもその場の雰囲気を残した描写がほしいわけです。以下暗い作例になりますが、ここまで暗くても開放+SS30〜60程度で、いい感じになりました。
しかしこの前後にトラブルが頻発します。
当時、デジタルはライカM10、フィルムではライカM4と美品のライカM6を贅沢に使用していましたが、さまざまな支払いが重なり、まずはM10を泣く泣く手放すことになりました。デジタルとフィルムのどっちを残す?という状況で、長く使えそうなフィルム機を残した形です。この判断は結構むずかしいものがありました。
しかし、この状況にさらに追い打ちがかかります。残ったライカM6とライカM4が同時期に故障、OHとなってしまいました。話すと長くなるので詳細は省略。手元にカメラがない状態になってしまったのですが、M10売却の一部を使い、かろうじてライカCLを入手。現行Summilux 50mm ASPHとライカCLで撮影をしていました。またこの頃には球面Summilux 35mmも売却し、ズミクロン35mm(旧ASPH)やElmar 35mm F3.5などを入手。とにかく取り回しのよいサイズ感のレンズを求めていました。余談ですが、好きなボディとしてはフィルム機のライカCLは最高だと個人的には思います。
OHの代金がかなりかさんでしまったことで、戻ってきたライカM6は動作確認だけしてそのまま売却となりました。またその前後でSummilux 50mm ASPHも維持できなくなり売却。かろうじてフォクトレンダーのVMレンズとエルマー35mm、OH後のライカM4、あとはライカCLというラインナップで対応していました。
このときに持っていたライカM4は、有名店でのOHということもあり、金額もかなりかかりましたが、使用感は最高に仕上がっていました。しかし・・この頃は複数の支払いがかさんでしまったこともあり、手元のキャッシュ・フローはガタガタ、1ヶ月だけ使用して泣く泣くライカM4も手放すことにしました。
この間にRollei 35Sを使うなど、ライカよりは少額で入手できる機材で、どうやってフィルム撮影を諦めないかに注力していました。この前後は機材の入れ替えが早く、Nikon FM2を使ったり、いろいろ変動的でした。しかしやっぱりライカの使用感は忘れられず・・・。
そこで何を思ったのか「ライカM10-P」を購入しました。フィルムのランニンコストを下げる意図だったのですが、ただのアホです。
このM10-Pは鹿児島への旅行などで大活躍しましたが、使用レンズがライカ製ではなかったこともあり、どこかでそのことが引っかかっていました。正直「普通に写ればいいじゃん」とも思います。しかしライカボディ、ライカレンズで撮りたい、それにフィルムのあのフィーリングがほしい・・・。一方で妻が妊娠中だったこともあり、子供撮影を見据えて次の一手を模索する必要がありました。そして「M10-P」は「ライカQ2」に化けました。
自分でも狂ってるなとは思っていますが・・・こちらはいわずとしれたSummilux 28mm F1.7が付属するデジタル機です。ライカレンズで撮りたい、Summiluxで撮りたい!という欲望を満たすのにこれほど最適な機種があるでしょうか。しかもAF付き。これなら来たるべき子供の撮影もできるでしょうし、何よりM型より小型で軽量、取り回しもよい、写りについても28mmレンズ+4700万画素でまったく申し分がない(クロップなどの機能も使い勝手がよい)。
ライカQ2でアガリだ!・・・・といってアガった人を見たことはないわけですが、さらにクレイジーなことに、いきなりライカQ2を売却して「ライカM4とSummilux 35mm f1.4 2nd」を買い直すという行動に出ました。
なんなんでしょうね・・・。先の鹿児島旅行にはフィルム機のRollei 35Sを持っていったのですが、その写りがとても良くて、これがライカだったらなぁ、そんなことも頭をよぎりましたし、来るべき子供が生まれてきたとき、どういう風に写真を残したいかも考えたときに、私はどうしてもフィルムで残したいと考えました。(このあたりは少し前の記事、ライカM4購入の記事で書いています。以下作例となります。)
一連の流れを書いてみて思うのは、色々わかってる方には非常にスリリングに聞こえるだろうなぁということ・・思い出しても胃が痛い。自分にとってライカM4は3台目、クセ玉の球面Summlux 35mm 2ndも2本目という・・・正直もう意地で付き合っている感じがします。
さて状態もそこそこのライカM4と、いまでは入手しづらくなっている伝説のクセ玉、球面Summilux 35mm、これでしばらく行ってみよう!めでたしめでたし・・・で終わるわけがない(笑)。ここからさらに前回の記事で書いた現行Summicron 50mmの流れになります。自分でも頭おかしいなと思いますw。
さて、オールドの球面Lux35mmと現行のズミクロン50mmでやっとバランス取れて落ち着いたね、と思いますが・・・そうなるわけがないんですよね・・・。Summilux遍歴なのに最後ズミクロンで終わるわけがないw。ここまでが導入で、次が本番なのですが、次にあのレンズを入手することになりました。つづく。