個人的な記憶とNOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM 作例

さて、ボディは一段落ついているわけですが(まったく落ちついてないw)、久々にレンズのお話でも。

Voigtlander(フォクトレンダー)レンズについてです。日本のコシナ製レンズなのですが、ライカMマウントのレンズを高クオリティで生産してくださっているメーカーです。ライカを使用しているユーザーには馴染み深いメーカーですし、最近はソニーEマウント向けにも高性能なレンズを供給してくれています。自分はライカメインで使用してきたので主にMマウントしか語れないのですが、非常に信頼性の高いメーカーであり、ライカーユーザーにとってはそれと反対に複雑な気持ちも抱きがちなメーカーでもあります。

個人的にはコシナさんとの付き合いは、Nikon Fマウントの58mmF1.4レンズまでさかのぼります。私がNikonを使用するのは今となっては意外ですが、一番最初に買ったデジタル一眼はNikon D5300でした。今から思うとど真ん中のエントリー機なわけですが、写真をはじめたいなと思った頃、カメラにもそれほど詳しくなく、ある程度調べて良さそうなものがこれでした。値段的にもギリギリ自分でも購入できるラインで、レンズキット、おそらく・・・「18-140 VR レンズキット」あたりかなと思うのですが。それほど極端な望遠(300とか)にしてなかったと思うので。物心ついて、というには年齢がかなり行っていましたが、自分の意思できちんとしたカメラを買うのははじめてでした。そのすぐ後で、単焦点レンズというのが高性能で写りがよいということを知り購入したのが、この58mmF1.4レンズでした。確か中野の某店舗で買いましたね。はじめての単焦点ということで、ボケの良さに感動して、色々撮っていました。このときの経験からコシナ製レンズへの信頼感は醸成されていました。

その後すぐにフィルム沼、ライカ沼に入ってしまい、デジタルではしばらくオールマイティーに使えるソニーのα7IIを使用していたのでそれ以降Nikon機を使う機会は未だに訪れていません。

さて本題のフォクトレンダーレンズですが、その後、最初のライカM6(ブラックのTTL)を入手したとき、Nokton 35mm F1.4(旧版)を手に入れて使っていました。このレンズ、当時もかなり人気のレンズでしたし、サードパーティ製のライカ向けレンズとしてはかなりクオリティの高い製品でしたが、今となっては旧バージョンとなっており、後で知りましたがフォーカスシフトなどもあって、今から思えば値段なりのもののようです。とはいえ、当時、このレンズで撮った写真に個人的に気に入っている写真が多く、よくある話かもしれませんが、素人のビギナーズラック的なショットがたくさんあります。今はこの頃のようには撮れないのかもしれません。話が前後しますが、この35mmの前に、旧バージョンのL39マウントのNokton 50mm F1.5も入手していました。これは新宿の地下にあるお店で買ったのをよく覚えています。はじめてあのお店で買ったものです。これがまた非常によく写った。ボケの綺麗さ、作りの良さ、とてもよかった。この2本のレンズがさらに私のコシナへの信頼感を高めてくれました。

その後、本物のライカレンズ沼にどっぷり浸かってしまい、しばらくコシナ製レンズから離れてしまいました。冒頭で、ライカユーザーが少し複雑な気持ちを持っていると述べましたがこのあたりについてです。ライカは伝統もありますし、多くの伝説もあるメーカーです。それに値段の高さから素人は手に入れにくいですし、本物のプロが好んで使用していたり、アマチュアのカメラ好きの心をくすぐる側面が多くありますが、コシナ製レンズはそうなると廉価なサードパーティの位置にどうしても据えられてしまう。自分も当時は、やっぱり本物がほしい・・・ということで、躍起になって無理をしてライカレンズを手に入れていました。まぁここで哲学的な方向にいってしまうほど若くはありませんが、ここで言う「本物」ってなんだ?とは正直思います。ライカレンズの値段の高さやクオリティは、ある程度経験してきてわかっているつもりです。撮れる写真にある程度違いを感じることもわかっていますが、それと何をどう撮るか、撮ったあとの処理をどうするか、撮った作品(自分で撮ったものは自分の中では作品でしょう)をどう提示するかはまた違う話だとも思います。そういう意味では全然話かわってしまいそうですが、森山大道さんとか、カメラなんか写ればなんでもいいよと言ってしまうかっこよさもわかります。そういう意味ではライカにも賛否ありますし、否定するとなんとなく貧乏人の僻みにも聞こえてしまう。この歳になって、こういうのは人の意見はまったく当てにならないと思うようになりました。あくまで自分です。その行為、撮るという行為をする自分、それだけが必要なのだと思いました。

話が横道にそれました。そんなこんなで、さんざんライカレンズを入手しては妻に苦労を(本人に自覚はないと思いますが)かけてきた私が最後に選んだのはこのレンズでした。

「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM」

入手前に個人的に考慮したいポイントは何かと考えました。よく写ること、35mmであること、作りがよいこと、リーズナブルであること、そして明るいレンズであること。そしてもう1点、コンパクトであること。なかなかに贅沢な注文かもしれませんが、それに一番マッチしていたのがこのレンズでした。

いまこのレンズを検討されている方がいるとしたら、私が上記にあげたポイントとほとんど同じようなことを考えていらっしゃると思います。おそらくある程度、それは叶えられるのではないかと、使ってみた実感から思います。

最後にコンパクトという点をあげましたが、とはいえ、ライカの例えばM10-Pなどで使えば、レンズ本体が332gということで結果的には1kg程度にはなりますので、ずっしりした感じはあります。300g台としては純正レンズであればSummilux 50mm ASPHあたりもこれくらいの重さなので、お持ちの方はイメージできるかもしれません。銅鏡サイズはLux 50mmよりは少し太め。これは人によるかもしれませんが、コシナレンズのデザインはとても洗練されていますし、リング操作がとてもしやすいため、この少し太めなサイズがちょうど操作しやすい気がします。まぁデザインはともかくサイズは光学性能とセットで検討されるべき部分だと思うので、これが現時点での答え、ということなのでしょう。

ちなみに旧バージョンの第2世代との違いは公式の説明だと以下になります。「(旧製品/第2世代から)定評ある光学性能はそのままに、全長は約20%減の50.5mm、重量は約30%減の332gとコンパクト化を実現」

写りについては、とても素直によく写るレンズだということ。こう書いてしまうと凡庸とも受け取られかねないのですが、それは違う。ライカレンズのめんどくさいところは、変なクセがあったらあったで、それが個性として確立してしまう点ですが、そういった変なクセは少なく、素直に写るという点がとてもよい。レンズにそれ以上、何を求めるのかです。よく言われるように日中にF1.2の開放を使う場面はそれほど多くありません。ちょっと薄暗い場所などでうまく使えるかなという程度。個人的には夜の散歩で使う場合は、F1.2のシャッタースピードを60固定で近所を撮っていましたが、かなりよく写ります。昼間だとふわっとした感じにはなりますが、露出がマッチしていればF1.2でもかなりシャープ。絞ればやはりシャープに素直によく写ります。私はフィルムをメインにしていた期間もあるため、デジタルでも昼は絞って撮るクセがついているのですが、それで駄目だと思ったことはありませんでした。

まぁ35mmでこの性能なので、フォトヨドバシさんとか、マップカメラさんのこのレンズのレビュー記事などでも記載がありますが、フリンジは多少でるわけです。しかし私はライカではDNG保存のみの設定にしており、jpg撮って出しはしていなかったため、Lightroomで低減させることができますし、どのレンズでも多少でるものなので、大きなデメリットにはならないでしょう。私はライカM10-Pで使っていましたが、まさかjpg撮って出しで写真撮ろうとか思っていませんよね?少し挑発的でしたでしょうか、申し訳ありません。デジタルのM型ライカではjpgは少しきびしい気がしています。面倒でもデジタル現像をした方がいいと思われます。フィルムでも自分で現像していたので、その手間を考えるとなんてことない。


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この35mmF1.2レンズを一時期、フィルムでも使っていましたが、フィルムも素直で使い勝手がよかったです。フォクトレンダーレンズは色の出方が素直なので、そういう意味ではオールマイティーで、そこに価値を見出せれば、変にクセのある高いレンズを買う必要はないように思います。Summicron 35mmとかも高性能ですけど、撮ってしまえば普通に写るレンズ、という感じですし・・。

ちょっと散漫とした内容になってしまって申し訳ないですが、自分がこのレンズに期待していたのは、F1.2という明るさは夜撮影でも耐えられることを想定して、昼間は絞って目の前の風景を冷静に切り取りたかった。それをきちんと叶えてくれたので、自分にとってはこのレンズはとてもスタンダードだと思いました。

以下、作例を掲載します。夜のショットはほぼF1.2か1.4あたり、かなりシャープです。昼はだいたいF5.6、F8、たまにF4あたりとか、薄暗いとF2.8あたりかなと。昼でも木陰の桜などを撮るときはF1.2とかで撮りましたが、背景ボケとかかなり美しく自然です。

以下にいくつか個別に写真を配置します。上の例も含めて一部飛行機での写真などは先日、私用で九州へ伺った際のもの。旅行などでも取り回しやすかったです。あと、そうそう、これをお伝えしなければ。このレンズ、最短が50cmであり、ライカの70cmより短く設定されています。ただしライカは70までしか対応していないので、ライブビューなどを使って50cmまで寄ることができます。そういった点もメリットかもしれません。(寄った作例は無いわけですがw)

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小型で使い勝手がよいLeitz MINOLTA CL、逆にいま欲しい

どのタイミングで手に入れたか、忘れてしまいましたが、確かα7IIやCanon F-1(過去記事)とか、他のいくつかのカメラと同じ時期に所有していた「Leitz MINOLTA CL(ライツミノルタCL)」についてです。

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New F-1で本体の重さに懲りたのですが、もっと手軽にフィルムカメラを使いたい、小型で軽量で・・・とわがままになっていき入手しました(まぁ色々理由は並べるけど、欲しいもんは欲しいーしかないんですけどね・・)。当時、Voigtlander(フォクトレンダー)のレンズ、たしかNokton 50mm/f1.5(L39マウント)などを所有しており、MLリンクをつけてMマウントボディで使ってみたいと考えていました。

そこでMマウントボディを探すわけですが、当然ライカM6やライカM3など花形機種は高額なため断念(・・・まぁあとでM6、M5、M2、M4、M-A、再度M6、M4は入手するので、これが地獄のはじまりといえばそうなりますがw)、比較的手頃なMマウント機、ライカCLに目をつけました。ただし純正ライカCLは当時でも若干高値でしたので、Leitz Minolta CL(ライツミノルタCL)に目をつけました。当時のオークションでは、徐々にオールドのフィルムカメラの値段が上がりつつあり、Leitz MINOLTA CL(またはLeica CL)の人気が少し出始めていました。値段も上がりつつあり、稀に出てくる安いものを狙っていました(Leica CLは中身はミノルタと同じでもネームバリューで少し高い)。

さてCLを探すにあたり、メーター(露出計)の動作はあまり期待していませんでした。元々Leica IIIfでは勘露出で撮影していたので、なくても対応できる。露出計のある・なしのカメラを往復してみると、露出計があると甘えてしまって勘がにぶることがありました。当時しばらくCANON F-1で露出計に慣れていたので、しばらくは慣れが必要だろうと思いました。それにかなり古い製品なため、メーター動作する製品の方が少ないとも聞いていたので、ここの優先度は低く見積もっていました。

Leitz MINOLTA CL(ライツミノルタCL)について

Leica CLは系統としてはライカが始めてメーターを搭載したLeica M5の派生だそうです。ライカ語りの面倒くささは、製品自体を語るのに会社の歴史を絡めて説明しなければならないこと。当時の状況ざっと概観すると、70年代前半からカメラは日本企業が席巻しており、ライカのレンジファインダーですら時代遅れにってきていたことと、ライカM5で露出計をはじめて組み込んだもののサイズ、デザインが従来のものと異なったためファンからも不評で、会社が傾きつつあったとのこと。まぁ複合的な要因だと思いますが、秀逸なデザインと機能性、それに堅牢性などを総合的にインテグレートできる状態にはなかったということなのでしょう。そんな流れから、日本企業とのコラボでコンパクトライカの開発が行われたようです。当時の日本は高度成長期でしたし、エンジニアリングは優れていたと。

さてこのライツミノルタCLですが、概観や作りが、まぁ他と比べればチープな印象を受けます。現在ではライカ史のメインストリームからは外れることが多い製品ではありますが、今では一周回って味があると個人的には思います。とはいってもシンプルで機能的という点はさすがライカとも言えます。

概観はシンプルで小型、手で持ちやすいサイズです。それに外装も少し薄く軽量なのもいいです(といっても金属なので相応の重さはあり)。シャッタースピード(SS)、ISOのダイアログが前面のシャッターボタン下にあり操作性がとてもよいです。ライカM5と同時代なためかストラップの取り付け位置が縦吊り位置についています。またファインダー内でブライトフレームだけでなく、SS、露出設定も確認できるため(ここもM5を踏襲)、撮影の使い勝手も意外といい。最近、フィルムカメラで写真を取る若い人が増えていますが、いまライトにレンジファインダーでフィルム写真をはじめるとしたら、このサイズ感と重さ、使い勝手、縦吊りのストラップなどファッション性も含めて、意外といい感じなのでは?それに本物のライカでもありますし、天下のMマウントをリーズナブルに試すにはよい機体だと思います。

私が入手したのは3万に満たない金額のもので、メーター動作不明(まったく期待してない)、多少汚れと打痕はあるが、シャッターはある程度動作しているものでした。ファインダーも汚れはあるが、それなりにクリアとのこと。2万円台はいまとなっては少しお安めかもしれません。当時は中の下くらいの状態。(もっと駄目なものだと2.5、程度のよいものは3.5~4万くらいかと。今(2019当時)は4~5万という感じでしょうか。Leica CLの方はネームバリューであまり相場は変わっていないようです。)

使用感についてですが、「巻き上げの感触が・・・」とかきもちわるいことを(←揶揄ではないw)言い出すのも野暮ですが、多少チープでありつつ別にそこまで変な感触でもなくスムーズに動作します。そこはM型などと比べるものでもないですし、そこまで気にならない(オールド製品は気にせず使うのだ、という気概が大事)。シャッター音や動作自体はいわゆる布幕フォーカルプレーンシャッターのそれで、特に問題ありません。フィルムの装填は、ボディの下側がガバっと外れるようになっており、ローライ35などと同じイメージです。メーターの電池もフィルム室の端に設置できるようになっています。使用電池は入手できないMR-9水銀電池を使用していますが、関東カメラサービスが出している電圧調整用のアダプターを使えばSR44などで代用できます。(現在入手できるボタン電池は1.5Vありますが、当時は1.35Vの電池であったため、電圧の違いから露出が1段高く表示されるため、このような処置をとります。)。とはいえ、このライツミノルタCLは露出計は不動でした。わざわざテストのために3000円くらいするアダプターも入手したんですけどね、動きませんでした(シャッターボタンを半押しすると、微妙に針がゆれる程度)。早々にあきらめて感露出での運用に切り替えました。ちなみにこのときのアダプターはその後ローライ35で使われることになります(後日記載します)。

Leitz MINOLTA CLでの作例など

そんなこんなで撮影できた写真がこちら。

CLで撮れたものではわりと気に入っている
雨上がりの夕刻、少し暗めですが後ろボケがいい感じ

よく自由が丘などを散策しながら使っていましたが、フォクトレンダーのレンズ性能なのか、たまたま勘露出がうまくいっていたのか、もしくはシャッタースピードがうまいこと正常だったのか・・・非常によく取れていました。当時は雨の日が多くあまり外で撮影できていなかったのですが、合間で撮影、個人的にはとてもいい雰囲気のものが撮れました。もしろん露出がいい加減なため、暗かったり、明るかったりすることはありますが、ある程度満足できました。

実際の撮影時には首に縦に下げる形でショルダー的な下げ方をしても小型で邪魔になりません。ライカ社さんも逆に今、新製品として廉価版フィルム機のCLを20万くらいで出したら大ヒットするんだけどな、とか思ってしまう(さすがにフィルムのMPやM-Aで60万はさすがにきつい・・)。30万以内なら検討段階に入ってくる感じですw。(FUJIFILMさんでもいいんだけど、どっかのメーカーさんフィルム機だしてくれないかなぁ・・・)このサイズ感と気軽さ、そしてライカという点でも、スナップしやすくて、その上で35mmフルサイズと考えると非常によい製品です。今は残念ながら手放してしまっているのですが、もう一回サブ機で欲しいと思わせてくれます。フィルム写真でライカが使いたいけど高い、といった人にもおすすめできると思います。露出計はスマホアプリでも補えるので問題なし。気軽に撮影を楽しみたいと思うなら十分楽しめるカメラだと思います。

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夜にちょっとしたライトアップされた公園
ボケの感じも自然かなと

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